パーキンソン病

パーキンソン病は、脳の神経細胞に異常が起こり、さまざまな運動障害が現れる病気で、徐々に進行します。 主な発症年齢は60歳代で、患者さんの多くは高齢者です。40歳以下で発病すると「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。 かつては”発症後10年で寝たきりになる”といわれていました。 しかし、近年では、早期から薬物療法を始めることで症状の進行を遅らせることができるようになってきています。 早く発見するために特徴的な症状を知っておき、発症を見逃さないようにしましょう。 現在、日本にはおよそ15万人の患者さんがおり、多くは高齢で発症しています。 そのため、社会の高齢化が進むにつれて、患者数が増えることが予想されています。


■パーキンソン病のガイドライン

2018年5月に改訂されたパーキンソン病のガイドラインは、11年以来、7年ぶりの改定で、 その間の新たな知見や、近年の新しい診断法・治療法の登場が反映された、現時点での標準的な診療の指針となっています。

【関連項目】:『パーキンソン病のガイドライン』


■パーキンソン病の症状

手足が震えるなど、体の動きが障害される病気

●体の動きに現れる症状

パーキンソン病では、主に次の4つの特徴的な症状が現れます。 代表的な症状は、「手足が震える」「筋肉が硬くこわばる」「動作が遅く、動きが小さくなる」「姿勢を立て直すのが難しくなる」といった運動障害です。 症状は体の片側から始まり、徐々に両側に広がって、さらに進むと体のバランスが保てなくなり、進行とともに日常生活に支障が生じます。

▼動作が遅い・少ない・小さい(運動緩慢)
動作に時間がかかり、動きが小さくなります。「箸がうまく使えない」「歩く速度が遅くなる、歩幅が狭く腕の振りが小さくなる」 「服を着替えるのに時間がかかる」などが現れます。座る動作では、体の方向転換に苦労をすることもあります。

▼じっとしているときに手足が震える(静止時震戦)
最も多く現れる症状です。安静時に手や足に細かな震えが起こるのが特徴です。 通常、体の片側から現れます。 1秒間に5回前後と比較的ゆっくりした震えが起こります。 多くの場合、震えを意識したり体を動かしたりすると、震えが軽くなったり止まったりします。

▼筋肉が硬くこわばる(筋固縮・筋強剛)
患者さんが自覚することは難しい症状ですが、診察で確認されます。 医師が患者さんの腕や脚を動かすと、関節がスムーズに動かず、カクカクするような抵抗が見られることがあり、これを「筋固縮」と呼びます。 脳の神経の異常により、筋肉が緊張するために起こります。 「首や肩を回せない」「肘・手首・手指や脚をスムーズに動かせない」と感じたり、顔の筋肉がこわばって「不愛想になった」などといわれることもあります。

▼姿勢を立て直すのが難しくなる・バランスが取れない(姿勢保持障害・姿勢反射障害)
進行時や重心がぐらついたときに、体のバランスを保てなくなり、姿勢を立て直すのが難しくなります。ときには、転んでしまう場合もあります。 健康な人であれば、体を押されても足を踏ん張るなどして体を支えることができますが、パーキンソン病のある人ではそのまま倒れてしまいます。 また、立つときに前屈みになったり、歩き出すと止まったり方向転換したりすることが難しくなります。 姿勢反射障害は、パーキンソン病がある程度進行してから現れます。

◆その他の症状

そのほか、 嗅覚障害睡眠障害排尿障害、立ち眩みなどの自律神経の障害や、 不安抑鬱や幻覚などの精神症状が現れることもあります。 自律神経の障害としては主に便秘があり、患者さんの8割程度に見られます。 また、高齢で重度の患者さんでは、「認知機能の障害」を合併することがあります。


●原因

体の動きに関わるドーパミンが減少して起こる

パーキンソン病の根本的な原因はまだ解明されていませんが、脳の神経細胞が信号のやり取りに必要とする神経伝達物質の1つである 「ドーパミン」が減少して、身体の動きに現れることがわかっています。 私たちが体を動かすときには、脳の「大脳皮質」から運動の指令が出され、全身の筋肉に伝わります。 その指令を調節しているのがドーパミンです。ドーパミンは脳の奥の奥の「黒質」にある「ドーパミン神経」で作られ、 「線条体」に送られて、線条体からは運動を調節する指令が出されます。 大脳皮質からの全身への運動の指令に、線条体からの運動を調節する指令が加わり、体を円滑に動かすことができるのです。 パーキンソン病では、この黒質のドーパミン神経が減少することでドーパミンが十分に作られなくなり量が減少して、 運動の調節がうまくいかなくなります。ドーパミン神経が減少する原因はよくわかっていませんが、 加齢によっても減少するため、必然的に高齢での発症が多くなります。 一方、若年で発症する場合は、特定の遺伝子異常が関わることが多いと考えられています。


●進行

何年もかけてゆっくりと進行するのが特徴

「脳卒中」のように、発症から短期間で重い麻痺になるようなことはありません。 パーキンソン病の進行の度合いは、「ヤール重症度」により5段階に分類されています。 1~3度は動きにやや制限があるものの自立した生活を送れる状態で、4~5度は介助が必要な状態です。 パーキンソン病の根本的な治療法はないため、かつては”パーキンソン病を発症すると、10年後には寝たきりになる”といわれていました。 しかし、現在では効果的な薬もあり、薬が効いている間はほとんどの症状を改善できるため、 発症から長い年数が経過していても、大きな支障なく生活することができます。 そのためには、できるだけ早くから治療を始めることが大切です。


●発見と診断

症状があれば受診を。画像検査も進歩している

早期治療のために、初期の症状を見逃さないようにしましょう。

◆初期に多いのは「安静時の震え」

初期に気付かれやすいのは、手足の震えです。手足の震えは他の病気でも起こりますが、 パーキンソン病の場合は、安静時に震えて、動作をする止まるのが典型的です。 反対に、例えばカップを持つなど、何か動作をした時に震えが起こる場合には、別の病気が疑われます。

◆パーキンソン病と似た病気もある

手足の震えは、「甲状腺の病気」「喘息の薬の副作用」でも起こることがあります。 その他、「本態性震戦」という震えだけが現れる病気もあり、この場合は動作をするときに震えが現れます。 また、手足の震えに限らず、パーキンソン病に似た症状が現れる病気があり、これらはまとめて「パーキンソン症候群」と呼ばれています。 手足の震えなど気になる症状がある場合は、神経内科を受診してください。

◆新しい検査により早期診断が可能に

診断では、問診の後、関節の動きや体のバランスを調べます。 その結果、パーキンソン病が疑われる場合には、MRIやSPECT(単一光子放出コンピュータ断層撮影)による画像検査などを行います。 ドーパミン神経の状態を見ることができるSPECT検査は、2014年1月末から保険診療が可能になりました。 従来の検査ではできなかったドーパミン神経の状態を直接見ることができるので、パーキンソン病の早期発見にとても役立ちます。